間接強制とその判例

(間接強制)
第172条 作為又は不作為を目的とする債務で前条第1項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
2 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる。
3 執行裁判所は、前2項の規定による決定をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない。
4 第1項の規定により命じられた金銭の支払があつた場合において、債務不履行により生じた損害の額が支払額を超えるときは、債権者は、その超える額について損害賠償の請求をすることを妨げられない。
5 第1項の強制執行の申立て又は第2項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
6 前条第2項の規定は、第1項の執行裁判所について準用する。
 
判例
 
[夫婦の同居義務の履行]
夫婦の同居義務の履行は、その性質上強制履行を許さない以上、間接強制も許されない。
[旧法事件]大決昭5.9.30民集9.926、判民昭5.88
 
[子の引渡し請求]
子の引渡し請求についての強制執行は、乳幼児が拉致・誘拐されているような場合にように、直接強制が一般道義感情・人権尊重の観点から是認される場合を除き、間接強制によるべきである。
[旧法事件]大阪高裁決30.12.14高民8.9.692、民執百選91
 
[抽象的不作為判決]
騒音及び振動の一定限度を超える侵入の差し止めを求める請求を認容するいわゆる抽象的不作為判決は間接強制によることが出来る。
名古屋高裁判決 昭60.4.12下民34.1〜4.461 名古屋新幹線訴訟 民執百選92
 
[間接強制による執行の要件]
債権者の一定の行為の妨害を禁止する旨の不作為を命ずる債務名義の強制執行においては、債権者が常に1度は権利侵害を免れないとすると債務名義を得た意味がなくなるから、違反行為の存在は強制執行の要件でもなく、執行開始の要件でもない。
東京高裁判決平3.5.29判例時報1397.24民執百選93
(建築工事妨害禁止処分を債務名義として違反行為があったとしても、間接強制が申し立てられこれが認容されたために提起された執行抗告事件)
 
 
主な4っつの判例をあげました。
これ以外にももちろん判例はあるわけですが、不必要との判断で割愛いたします。