ニュース:障害者差別禁止条例案:千葉県、悪質なら名前公表

障害者差別禁止条例案:千葉県、悪質なら名前公表
 千葉県が制定を進める全国初の障害者差別禁止条例の要綱案が21日明らかになった。代表的な差別を列挙、調査・解消のため「差別解消委員会」を設置。悪質な事案は同委の通告に基づき知事が当事者への勧告や名前の公表をする。年明けの県議会に条例案を出し、10月施行を目指す。

 国連は01年、同様の法律制定を日本に勧告しており、国や他自治体への波及も期待される。

 昨年7月公表の「障害者地域生活づくり宣言」に基づき検討を重ねていた。要綱案では、障害を「日常・社会生活で継続的に制限を受ける状態」と定義し、国内で広く用いられている「身体・知的・精神」の3障害より幅を持たせた。顔にあざがある「ユニークフェイス」や高次脳機能障害(病気やけがで脳に損傷を受けた人の認知障害または人格障害)など、障害者手帳がない人も対象。

 代表的な差別は▽医療▽雇用▽教育など生活全般の計8分野で具体的に挙げる。「電車に乗せない」などの直接的な行為だけでなく「駅構内に段差があり車椅子で利用出来ない」など「合理的な配慮の欠如」も含めた。

 差別解消委は障害者を含む10人程度で構成。差別に関する相談を受けて調査し、助言やあっせんを行う。従わない場合は知事に通告する。知事は当事者に勧告し、悪質な場合は名前を公表。差別解消に努力する人や企業への表彰制度も設ける。

 県などによると、40カ国以上が障害者差別を禁止する法律を制定している。【草野和彦】

 ◇「心のバリアフリー」目標

 「レストラン入店を断られた」「診察を拒否された」など日常的に傷つけられている障害者。日本弁護士連合会や障害者団体が法案を発表しているが、国に具体的な動きはない。千葉県は障害者や法律家だけでなく、一般県民からも広く意見を集めた。罰則で差別禁止を強制するのでなく、障害への理解を広め「心のバリアフリー」を目指すのが特徴だ。

 昨年9月に県が事例を募集したところ、約3カ月間で700件以上が集まった。障害者や企業、教育関係者ら委員29人による研究会が分析し、議論を重ねた。県内各地で30回以上のタウンミーティングも開き、延べ3000人以上が参加した。

 要綱案で工夫がにじむのは、差別解消委員会の役割だ。個別事案の解決にとどまらず、別の機関を設置して制度や慣習など根本的な問題の解消にも取り組むなど、踏み込んだ内容になっている。

 障害者だけでなく、いじめの被害者や在日外国人、犯罪被害者など、理不尽な理由でつらい思いをする人は多い。これらの人々を地域社会に包み込む「ソーシャル・インクルージョン(社会的包括)」の理念が要綱案の根幹にはあり、地域社会のあるべき姿を示している。【草野和彦】


http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20051221k0000e040074000c.html