理解する

こうやって記録していて分かった事がある。
彼女が一番私に怒っている事は自ら変化を求める事だ。
私は変化しつづけ、彼女は安定を求めた。
まるで男性と女性の願望の違いのようだ。
 
思えば私の今の職場についたときの彼女の喜びようは想像以上だった。
たしかに安定した職場とも言える。成績も悪くなかった(いや良かったというべきか)
会社が彼女の父親の関係する子会社である事も彼女を喜ばせた。
だがそれが私の最大の不満である事には遂に気づいて貰えなかった。
入社後もその事は一切口を閉ざし、仕事に関わる話は彼女の父親と情報交換もしなかった。
おかげで当初は仕事もヨソモノ扱いでかなり苦労した事をはっきり思い出だす。
しかし3ヶ月ほどで周囲の評価は反転する。
顧客からも高評価を得、周囲の人間にも一気にその話しは広がった。
…しかし彼女の父親がその評価に喜んだのか、私との関係を吹聴しだした。
一気に評価は落ちた。「あの男はコネで入りコネで顧客を掴んでいる」と噂が広がった。
 
この事は、実は今でも尾を引いている。
正直言って実力社会の中において自分の能力以外の評価を受けるぐらいなら辞めたいと思った。
まして使ってもいないコネ、所属してさえいない派閥に悩まされるのはごめんだ。
仕事はいつも孤独に行なっており、他人に仕事のノウハウを明かす事は無い。
本当に特別なノウハウは家族でさえも教えていない。
 
私が彼女に今の仕事を辞めて大学院に行きたいと告げた時、理解するべきだった。
彼女は猛反対した。なぜ今の安定した仕事を捨てて大学に行きたいのかと。
彼女は私に執着していたのではなく
彼女の父親と同じ仕事をしている私に執着していたのだろう。
彼女の父親と同じように働き、父親のように家事をし、父親のように彼女に対応する、そんな私を愛したのだろう。
 
彼女は私が突然事故後に性格が変わったと言いつづけていた。
その理由がやっと分かった。
 
 
 
 
 

私が彼女の父親から、ただの男になったからだ………