大和高校卒業公演:夏芙蓉劇評

大和高校卒業公演:夏芙蓉 劇評

2年ほど前にも見に来たが
ここは役者もシナリオもいい。

特に今回はおそらくはプロの脚本を使ったのだろう。
これが学生、いや一般的に理解出来るのかさえ疑問なのに
それを高校演劇でやってしまう。
それを凄いと言わずに、何を凄いと言うのか。



シナリオ

結果的には悲劇なのだが
当初は卒業式の終りに集まった学生を演じている。
しかし
「私が…呼んだ?」

「これ車でみんなで買いに行ったんだよな」
など、実はみな幽霊である事をちりばめてあり
前半のほのぼのとした雰囲気を、後半に一気に落とす。


ギリギリまで、ボロボロになった主人公に対し
最後の最後に、卒業証書を受けとったマイコの喜ぶ姿を見せる。
ここが他の悲劇にはない、救いの手だ。

非常によく出来た台本であり
これを
卒業公演に選んだ(しかも、今回はたまたま震災が重なっている)このセンスは一級品だ。




役者
名前が分からないので省略するが
まず、個々のキャラクターをよく把握している。
・優等生
・男っぽい友人
・ドジっ子
・スポーツ万能

やや、男っぽい友人とスポーツ万能が被っていたが
それでもバランスを崩していないのは
・優等生
・男っぽい友人

・ドジっ子
・スポーツ万能
で分けて演じさせたからだろう。
全体的な技術としては
抜群とは言い難いが、高校演劇レベルは超えていると思う。
と言っても私は学生演劇に所属した事が無いので
はっきりは分からないが、真面目に取り組んでいるのが
本当によく分かった。


その中でも、優等生とマイコのコンビは
非常に良い。
気になったのがマイコ役に首を傾ける癖があるが
あとは全体的に自然だ。

演出的に気になったのは
やはり座っているシーンが多いという事。
確かにあのシーンでは座っている方が自然なのだが
見ている観客は、あの平たい客席、後ろの方は役者の声しか聞こえない。
なるべく立って芝居をしてくれると
見やすくていい。
もしくは学校の教室だ。机の上にお尻を乗せたって誰も文句は言うまい。


幕引き後に、照明と音響が幕を少しだけ開けて紹介したのは
アドリブだろうが面白かった。


これで卒業、これで終りというのは
とてももったいない気がするが
彼女達は今後、どうするんだろう?
それをラストの役者紹介で聞けるとよかった。



こういったアマチュアで、非常に高いレベルの舞台を見ると
じゃあプロの舞台って何だろうと、とても深い悩みに落ち込んでいく。
金を取って、お客様の満足いく芝居を本当に見せられているんだろうか?
私が今までみたプロ中で、どれだけ満足出来た芝居があったのか。



エンターテイメント、サブカルチャーはいま激しいバッシングにあっている。
「不謹慎」という、誰が得するのか分からない言葉によって
野球は自粛、花火も自粛、イベント会社は倒産し、電車には広告が全く貼っていない。
演劇だってそうだ。

演劇とは、もともと起源は神に見せる舞であり
天災が起こった時は、むしろやるべきなのだ。


軍隊を例に取るのは適切では無いかもしれないが
被災地が最前線なら、都心部は後方支援であり
後方支援が逃げ出したら、最前線で戦う兵隊は逃げ帰る場所がなくなってしまう。

軍隊には慰安部隊というものがあり
疲れた兵士を癒すために、芝居を見せ、うたを歌い、舞を踊る。
いまの後方支援は、一部で逃げ出し、食料を買い占め、慰安部隊を処刑し
頭脳はただ部下を叱責する事にやっきになっている。

これでは最前線で戦う自衛隊ハイパーレスキュー達が可哀相だ。


話がそれた。

総合的に見て、八王子から大和まで見に行く価値がある。
実に面白かった。
確定申告(期限は3月15日)を放置して見に行っただけはある。


えぇ、いま慌てて八王子税務署に向かってます(T_T)