電子化について思う事

個人的な意見です。


電子書籍が大はやりで、紙の本など駆逐されるだろうと言われて久しいが

20年ほど前にも同じ騒ぎがありましたね。
Windows95が来日した時も、紙屋が潰れる、印刷屋は廃業なんて言われたが
実際には、むしろ紙の需要は増えたんです。


電子書籍に古本を移行させようという動きが
加速しているようですね。
本を裁断して、スキャナーで読み取り電子化するそうです。

仕組みは簡単なので、うちでもやろうと思えば出来ますが
私は、古本の修復をひとつの売りにしています。
自分の修復した本をバラバラにするなんて出来ませんよ。

それに他人の本を電子化するのは著作権法に触れるのだそうです。
私は著作権法には疎いのですが
実際に調べると、映像のダビングなども違法なようです。


中には文化の保護だと言い張るかもしれません。
著作権者がそれを認めるなら、それも良いでしょう。
しかし著作権者が預かり知らぬ場所で勝手に電子化するのが
本当に『文化の保護』でしょうか?

例えば絵画は、そのキャンバスに合わせて表現を変えるのです。
中には絵画を掛ける位置を計算してデザインする場合もあります。
見た事がありませんか、天井にかかった丸いキャンバスを。

電子書籍にするなら、それを計算して著者の表現だって変える事でしょう。
それを身勝手に素人が編集して良いわけがありません。
デザインの崩れた著書は、もはや文化ではなく
劣化コピーです。
古代書物には繰り返し写本したために原文と全く違う物になってしまった物もたくさんあるのです。


世の中には『文化、芸術は大衆の物』と主張する方もいらっしゃいますが
私はそうは思いません。

芸術は理解出来る者だけの嗜みであり
その対価を支払った物だけが閲覧すれば良いのです。
本当に良い物はたいてい『心臓が止まりそうなほど高い』ものであり
それをケチる人に作者の生み出した苦労や心情など理解出来るはずもありません。

芸術は、芸術家の一生を塗り込めるものですから
人の一生が買えるほどの値段になってしまうんです。


逆にいうと、コピーに何十万も金をかけるのも
物の価値の分からない人だなぁと思うわけですが。

価値の概算は、芸術家の人生を数字に変え
その作品にどれほど心血を注いだかで決まります。



芸術家が死んでから価値が出るんではなく
死ななくては価値が分からないのが目利きの本音じゃないでしょうか。