脳外傷リハビリテーションセミナー「基礎講演」

国立身体障害者リハビリテーションセンターの中島先生が講演して下さいました。
以前の中島先生を知らないので分かりませんが、司会の蒲澤先生は大変優しくなったとおっしゃっていました。
(以前は優しくなかったのか?(笑))
 
まず高次脳機能障害の発祥として知られる名古屋リハについてお話をされ
そこで今回、会場となった名古屋リハの阿部先生、蒲澤先生が最初に高次脳機能障害
問題視し、そこで広めてくれたという事をお話されました。
阿部先生、蒲澤ドクターに感謝感謝。
ちなみに高次脳機能障害の診断基準の作成をされたのも蒲澤ドクターだという事です。
なるほど。診断基準は政府が創るのではなく医師の手で作られていたのか。
私はてっきり厚生省の政治家が集まって作成しているものだとばかり思っていたが
モデル事業が診断基準の作成に役立っていたとは考えもつかなかった。
 
そこからしばし症例のお話。
そしてそこから考える高次脳機能障害の特徴と言える事
それは
●見えない障害であること
  外見から分かりにくい
  社会に出てから初めて気づかれるという事
 
そしてさらに重要な事は
 
●隠れた障害である事
  利き手が使えない
  歩けない
 等の障害が目立ってしまい、本当の原因である高次脳機能障害が隠れてしまっているということ。
 
さらに話しは海外に移る。
そこで出された高次脳機能障害者の特徴と対策(?)
・いろいろな原因がある
・説明しにくい
そのための訓練がある
・福祉サービスから漏れる
・社会復帰を目指したい人達である。
という事が海外でも分かっているらしい。
特に注目したいのはそのための訓練が海外にはあるという事だ。
これに関してはどうも中島先生もはっきりとおっしゃらなかったが何か期待できる訓練があるのかもしれない。
ぜひ次の講演に期待したい。
 
そしてモデル事業についてに話しは移る。
平成17年度でモデル事業は終了してしまうのだが
その事業が出したかった結果とは
 事例を集め対策を練る。そしてその対策をどうやって普及させていくかという事
モデル事業は平成13年度から始まり平成17年度で終了する。
その中の前期3年の中で評価(?)たぶん診断基準?の作成を行なったと思われる。
そして高次脳機能障害を重度から軽度で8段階に分け、目標を5段階
「施設入所」「在宅介護」「在宅生活」「福祉就労」「就職、復職、復学」に分けて
事例を集めていた模様だ。
モデルの参考は人員424名、男性328名、女性95名、平均年齢33.1歳である。
比率として脳外傷76% 脳血管障害17% 低酸素症3%である。
 
障害としてのデータは
・記憶障害 90%
・注意障害 82%
遂行機能障害 75%
・病識欠落 60%
特に中島先生は病識欠落を問題視していた。これは自分に高次脳機能障害という問題が発生している事を
認識していないという事で
そのために対策が全くできないという大変問題な行動だとおっしゃっている。
(ちなみに認識していないのと意識していないでは全く意味が違うので注意)
 
また精神的障害の発生として
・対人技能拙劣 55%
・依存的退行 51%
・意欲発動性の低下 47%
固執性 46%
・感情コントロール 44%(俗に言うキレルという状態)
 
 なお高次脳機能障害は行政的呼び名であり、学術的な呼び名は
 脳損傷に起因する認知障害全般」というらしい。
 
診断基準については細かくは飛ばすが(話しが早すぎて書き取れなかっただけですが)
重要な検査所見についての部分だけ。
MRI、CT、脳波による画像所見か、器質的病変を確認できた医師の診断によって
検査所見とする事が出来る。
 ★つまり事故当時の画像所見が紛失などでも当時の医師から画像所見として脳の損傷があったことが
診断書などで証明されればそれを元に画像所見の代わりとする事ができるという事である。
もしも古い事故の傷が元で高次脳機能障害となって今、画像所見が未保存等で取れなかったとしても
事故当時の担当医が当時の脳の画像所見を記憶していて診断書を書いていただけるのであれば
それを元に画像所見とする事が可能という事である。
 
なお失語症は行政的理由により高次脳機能障害からは、はずされる。
失語症の場合はそれ相当の対応が必要であり、高次脳機能障害では対応しきれないとの判断からだ。
 
なお高次脳機能障害としてモデルの中で88%は器質的病変があったとされている。
逆にいうと12%は器質的病変は確認されなかったということだ。
ただし器質的病変の診断基準にはPETが入っていない事も注目しなければいけない。
 
●障害の尺度
障害のレベルを付ける事は本来は好ましい事ではないとの前置きを頂きながら
今回はモデル事業としての便宜上尺度をつけている事を認識していただきたい。
尺度は1〜8で数字が大きいほど程度は軽いと考えていただきたい。
7〜8は就労も可能なレベルである。
ここで中島先生は面白いデータを示す。
知能レベルと障害尺度を同時に示したものだ。
知能レベルが大きく後退した方の障害レベルは確かに障害レベルも相対的に高い。
しかし、知能レベルが高い者の障害レベルが低いとは限らないという結果になった。
私の頭の記憶では119〜110の知能指数に障害レベルが3を示す者が2人いた事を記憶している。
それが何を示しているかと言うと
知能検査だけでは障害を見逃す可能性が多いに有る
という事だ。
医療関係者でこのブログを偶然でも見ていただけた方はこれだけは絶対に忘れないでいただきたい。
 
 データに戻ると
高次脳機能障害のみ発症の方が 43%
・運動障害が併発している方が  57%
 
 その中で精神障害、特に重度の「幻覚、妄想」の発生は 3%
 IQ退行(50未満)は 9%
と想像以上に極端な障害を発生させる可能性は薄い事が分かる。
たぶん私のIQもそこまで落ちてないと思いたい(笑)
 
 さて訓練効果である。
訓練の効果は上の障害尺度の8段階からどのように上昇したかで効果が上がったかを
確認している。
そのため、実際の尺度以外の効果が上がった人は無視されていると思われ
実際の訓練効果よりも低い数値で出されていることを心に留めていただきたい。
また尺度がたったの8段階であり、細かく分ければもっと数値が上がったであろう。
訓練効果が確認できた方は 31%
受傷後
・6月未満は   44%で平均1.6の伸び
・6月〜1年未満 36%で平均1.5の伸び
・1年以上    14%で平均1.2の伸び(しかし悪化例が3例)
これからも分かるように受傷後1年未満での訓練が非常に有効な事が分かる。
いかに早い段階で訓練に移るかが今後の脳外傷の重要点であり
個人的(papabon)には1年を超えた後の脳外傷のリハビリについて工夫が必要なのでは無いかと感じている。
 
 ●感想
papabonとしては1年以上過ぎた障害者へのリハビリに多少の工夫をこらすことで
回復率を伸ばす事が出来るのではないかと考えている。
脳外傷1年未満を子供の脳、その後を大人の脳の成長率として考えてみると分かりやすい。
子供の脳は成長しやすいが、大人の脳に同じ刺激を与えてもなかなか発達しない。
しかし大人の脳は成長しないわけでは無いのだ。
最近は大人の脳を活性化させるプログラムが多く出されている。
私個人としては脳活性化の最有力は最近のこのような、一般プログラムこそ効くのでは無いかと考えている。
(ただし私は医療関係者では無いので責任は持ちかねる)
私が個人で行なった大人の計算ドリルは当時の私には非常に難しいものであったが
大変効果的であったと考えている。
もちろん、個別の対応が必要なために一概には言えないが
応用的な脳の機能よりも基本的な脳の機能を鍛える事に専念した方が良いと
私は考えているのです。
 
 
以上長文閲覧ありがとうございました。